求道学舎の写真

求道学舎リノベーション住宅

求道学舎リノベーション住宅は、近代建築の巨匠・建築家武田五一の設計により大正15年に建てられた学生寮『求道学舎(きゅうどうがくしゃ)』を、美しく個性的な歴史的建物として後世まで残していくため、コーポラティブ方式により住宅として再生(リノベーション)されました。

樋口一葉や石川啄木らの数多くの文化人が暮らした本郷の地で、樹齢70年以上の木々に囲まれ、ひっそりとたたずむ『求道学舎』は、およそ80年間に亘った学生寮としての役割を終え、平成18年春、プロジェクトの趣旨にご賛同いただいた参加者の皆様と多くの方々のご協力を得て、共同住宅として生まれ変わりました。

※現在、入居者の募集は行っておりません。

 

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求道学舎リノベーション住宅プロジェクトのコンセプト

※以下は、2004年プロジェクト始動当時のコンセプトです。プロジェクト完成後、歴史を継ぐことになった新たなオーナーの皆さんの間で管理規約が設けられており、現在とは若干異なる部分があります。

歴史的建物を生かした心地よい住まいづくり

gakusya11ヨーロッパの都市を思わせる雰囲気を持つホテルのような佇まいの住宅。かつての寮室を複数連結して住宅に改造しました。二人暮し向きのコンパクトな程よい広さの住まい、一人暮しにも最適な都心に近い環境を生かした研究室・SOHO・プライベートなサテライトオフィスとしても使い心地の良い空間、また、子育て最中のファミリーや、ゆったりとしたスペースが欲しい人に向いた住戸もあります。10軒の隣人達が、相互に距離を適当に保ちながら、風格ある佇まいを共有して暮す、そんな都会的な落ち着きと安らぎが生まれる住宅です。

創建当時はモダーンな外観で、最新設備を誇ったこの建物も、時代の流れの中で、若者のニーズに適合しない面も多くなり、平成11年に閉鎖されました。ある意味で、学生寮としての時代的な使命を全うしたものといえるでしょう。その後、当初は、今の建物を完全に取り壊して、新たな建築を作ることも検討しました。しかし、できることなら、建築的にも意義のある現存の建物を残したいという気持ちが強まり、建物の保存再生を検討することになりました。調査の結果、幸い建物のコンクリートの状態は驚異的とも言えるほど良好であり、78年の時を経ても、頑強さを失っていませんでした。もちろん、78年経っているわけですから、建物の隅部で風雨が激しくあたる部分などでは風化も見られます。しかし、総体では健全な部分が8割以上もあり、不良な部分を取り除き、新たに鉄筋・コンクリートを投入すれば、新築同様の強度を回復させることができます。建物全体としての中性化についても、アルカリ性を回復する液剤を建物全体に含浸させることで、今後60年間、中性化の心配をしないで済むということもわかっています。この建物は関東大震災直後に建設されたもので、当時最新の耐震思想で作られていて、現在の最も進んだ耐震設計法と比較しても引けを取らないバランスの良い建物でした。施工は戸田組(現在の戸田建設の前身)で、耐震診断にあたった戸田建設の技術陣も先達の技術水準の高さに舌を巻き、かつ誇りに思ったことでした。

「定期借地権+コーポラティブ方式」による住宅

土地の権利は現在の土地所有者である宗教法人(単立法人で求道会といいます)が持ち、 建物所有者は定期借地権にて共同(「準共有」といいます。)で62年間借り受けています。その土地にある「歴史的な建物」を通常のマンションと同様区分所有し、参加者で結成する建設組合にてリノベーション(修復)されました。

◆求道学舎リノベーション住宅の定期借地権設定契約の概要

各区分所有者の方は地主(求道会)様と60年(リノベーション当初からの期間です。)後に建物買取オプションのある期間62年の「定期借地権設定契約」をご締結いただきます。
60年後、所定の金額で地主様が各区分所有者の方から建物を買い取ることができ、その場合、当該契約はそこで終了します。その後、ご希望される方におかれましては、地主様兼家主様と相場家賃にて2年間の「定期借家契約」を結び、住み続けることができるオプション(ただし、更新なし)も用意されています。

◆コーポラティブ方式とは

住宅を取得したいと考えている方々が集まり、共同で土地を確保し、各自の要望を取り入れながら、共同で注文主となって住宅を建設する方法のことをいいます。

沿革

kyudogakusya2この建物は、もと「求道学舎(きゅうどうがくしゃ)」という名の学生寮でした。 明治35年、浄土真宗の僧侶近角常観(ちかずみじょうかん)が、時代を担う有為な人材育成のために創設したもので、幾代にわたる舎監の薫陶のもと100年にわたり、その出身者は実業界、法曹界、教育界等各界で活躍してきました。今に残る建物は、関東大震災後大正15年に建て替えられたもので、設計者は京都大学建築学科を創設した武田五一です。

当時は、ホテルと見まがう程の白亜のモダン建築で、鉄筋コンクリート造、水洗トイレつき、食堂・浴室も備えていて、学生寮の水準をはるかに抜きん出た建物でした。しかし、老朽化が著しくなったことから、平成11年に閉鎖されました。

kaikan01kaikan04隣接地に建つ求道会館は、広く信仰を説く場として、同じく武田五一の設計により大正4年に建てられたもので、東京都の指定有形文化財となっています。浄土真宗でありながら内部はキリスト教会堂の形式である一方、祭壇のところには和風の六角堂が祀られている等、武田五一ならではの大胆な和洋折衷建築です。残念ながら、初期の建物は大正12年の関東大震災により大被害を受け、特に内部の崩壊は著しく、昭和28年から以後50年間閉鎖に追い込まれてしまいましたが、平成8年から7年間にわたり修復工事が行われ、平成14年6月に竣工、当時の様相が復元されました。現在はコンサートや講演会等に活用されています。

武田五一

武田五一
武田五一

1872(明治5)年~1938(昭和13)年

求道学舎を設計した武田五一は、アールヌーボーやゼセッションを日本に紹介したといわれる建築家であり、京都大学建築学科の創設者でもあります。また、日本の伝統建築にも関心が深く、茶室研究、平等院鳳凰堂や法隆寺の修復等にも力を尽くしました。

数多くの著名な作品を残していますが、代表的なものとしては、国の重要文化財に指定されている山口県庁舎のほか、日本興業銀行、福島行信邸、名和昆虫研究所記念昆虫館、京都府記念図書館、同志社女学校栄光館などがあります。

▼武田五一の年譜
明治5年 広島県福山町に武田直行の子として誕生。
明治27年 東京帝国大学造家学科に入学。
明治30年 東京帝国大学造家学科を卒業、大学院に入学。
大学院在学中に、妻木頼黄の指導の下、和風建築再興の最初の作品といわれる日本興業銀行本店を完成。
明治32年 東京帝国大学助教授となる。
その後、図案研究のためヨーロッパに派遣される。
明治36年 帰国後、京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)図案科の教授となる。
ゼセッション様式の福島行信邸や、名和昆虫研究所記念昆虫館、京都府記念図書館、京都商品陳列所などを手がける。
明治末期頃からは日本建築の伝統を盛り込むようになり、同志社女学校静和館、芝川邸等が創られる。求道学舎に隣接する求道会館(東京都指定有形文化財)はこの時期の作品。
大正8年 京都大学工学部建築科を創設。初代教授となる。
後期には、京都帝国大学建築学教室、藤井有鄰館、東方文化院京都研究所、同志社女学校栄光館、京都銀行集会所などを残す。
昭和13年 没。

求道学舎リノベーション住宅プロジェクトが完成するまで

求道学舎リノベーション住宅プロジェクトは、2004年、築78年を迎えて傷みがいよいよ激しくなった求道学舎を何とか後世まで残したいという当時のオーナーの強い想いを受けてスタートしました。
求道学舎が、2006年、リノベーション住宅として再生されるまでの山あり谷ありの物語をご紹介します。

▼目次

  1. プロジェクト参加者の募集活動開始!
  2. 本プロジェクトが相次いで新聞記事に掲載されました
  3. プロジェクト参加者が確定!建設組合が設立されました
  4. 工事契約が承認され、定期借地契約が締結されました
  5. 準備工事が始まりました
  6. 100年前のお宝(?)譲ります!
  7. NHK「おはよう日本(首都圏版)」で紹介されました
  8. 内装設計の個別相談を実施
  9. 改修工事が進行中!
  10. 竣工しました!

※お願い:本建物は個人の方々が住まわれる(少し珍しい)普通の集合住宅であり、一般公開は行っておりません。近隣の方々のご迷惑にもなりますので、ご見学はご遠慮願いますとともに、敷地内への無断立入は固くお断り申し上げます。

1. プロジェクト参加者の募集活動開始!

041017_022004年9月15日の読売新聞に当プロジェクトの紹介記事(2.参照)が掲載され、これへお問合せいただいた方を中心に 2004年10月17日、求道会館にてプロジェクト説明会を開催致しました。

2. 本プロジェクトが相次いで新聞記事に掲載されました

200501112004年9月15日の読売新聞を皮切りに、相次いで新聞等に当プロジェクトの紹介記事が掲載されました。スケルトン定借+コーポラティブによる貴重な歴史的建物を再生する当プロジェクトへの注目度の高さがうかがえます。

3. プロジェクト参加者が確定!建設組合が設立されました

050226_02およそ半年の募集活動を行った結果、ついに参加者全員が確定し、2004年2月26日(土)求道会館にて求道学舎リノベーション住宅建設組合の設立総会を開催しました。個性的な建物にふさわしく、多種多様な職業や経歴の方々が集まりました。これから年内の竣工を目指し、リノベーション事業にご尽力いただくことになりますが、築70年の建物がどのように再生されるのか、乞うご期待!

4. 工事契約が承認され、定期借地契約が締結されました

050529_02東京都防災・建築まちづくりセンターから耐震改修についてお墨付き(耐震評定)も得られ、標準工事内容が確定しました。5月29日総会にて、施工業者との請負契約が承認され、地主である求道会様との定期借地権契約や築80年の建物の譲渡契約、求道会様への改修工事委託契約などさまざな契約(何せ、前例のない築80年の建物のリノベーション事業です。仕組は複雑なのです…)への調印が行われました。

5. 準備工事が始まりました

050619_01まさに前代未聞の案件だけに、お役所も苦心されたのでしょう。協議を重ねること約1年、6月7日、ついに建築確認がおりました。そして、住宅金融公庫の担当者の方のご協力のおかげで、この前代未聞の案件で融資が利用できることにもなりました。これでようやく工事に取り掛かる全ての準備が整いました。現場には工事事務所が設営され、建物の景観の一部となっていたツタやジャングルのような庭木の撤去作業が始まり、本工事の着工に向け、着々と準備が進められています。

6. 100年前のお宝(?)譲ります!

050619_04求道会様のご厚意により、内装を解体する前に、学舎内にある物品が有志に配られることになりました。6月19日、組合員や学術研究者の方々、参加者募集活動の際にお世話になった方々などにお集まりいただき、遺物の引取り手募集会を開催しました。大変な盛況となり、参加者は皆さん目の色を変えて物色!誰が使ったかわからない湯のみから古風な茶釜や家具、カタカナ表示の小学校国語の教科書、凄腕は部屋の扉まで、それはそれは嬉しそうに持って行かれました(とりあえず、筆者も100年モノのドアノブを記念にいただきました)。果たして、本物のお宝はあったでしょうか?!

7. NHK「おはよう日本(首都圏版)」で紹介されました

050625_016月30日、NHKの朝のニュース「おはよう日本(首都圏版)」で当プロジェクトが紹介されました。「愛着残る建物を次の世代に」をテーマに、求道学舎の歴史から建物への地主様の思い入れ、プロジェクトの経緯が紹介され、内装を壊す様子や設計相談の様子などが放送されました。

8. 内装設計の個別相談を実施

img_1055組合結成後、組合活動とは別に個人の住戸の内装設計について、ご自身の生活に合った間取りや仕上に変更する検討が個別に進められています。80年前につくられた学生寮の部屋が、組合員の皆さんと設計者のアイディアで果たしてどのような住戸に生まれ変わるのでしょうか。

9. 改修工事が進行中!

060113_1603~0001改修工事が本格的に始まりました。象徴的だったツタが取り除かれた後、外装材、内装材が撤去され、傷んでいたコンクリートや鉄筋の撤去・修復作業が行われています。内装材が除かれても、廊下の美しいアーチは相変わらずです。しかし、さすが築80年、躯体の補修に少々手間取り、工事は若干遅れ気味ですが、急ピッチで工事が進められています。

10. 竣工しました!

060415_01改修工事がついに竣工しました!築80年のRC造の建物を改修し、集合住宅宅として再生した事業など、日本初の試みではないでしょうか。施工者の戸田建設、融資を行ってくれた金融機関、そのサポートをしてくれた住宅金融公庫や東日本住宅評価センターの方々ほか本事業に携わった全員が始めての試みであり、このように竣工に至ったのも、これらの方々の惜しみない協力と建設組合員の粘り強い活動が一体化してこそと、コーディネイターとして感激もひとしおで、関係者への感謝の念に絶えません。また、工事が予想以上に長引き、近隣の皆様には大変ご迷惑をお掛けしました。ご協力ありがとうございました。
新緑がまぶしくなりつつある4月の土曜日、関係者をご招待して、求道会館で竣工パーティを行いました。かつての趣きを随所に復活させ、再生された求道学舎は、新たな入居者を得て、更に約60年の歴史を刻んでいくことになります。

※お願い:既に集合住宅として改修済みです。私有地であり、公開は行っておりません。敷地内への立入は固くお断り申し上げます。

歴史と文化の薫り高い本郷の緑豊かな高台

求道会館
求道会館

計画地は東京大学正門の近くの閑静な住宅街に位置しています。美しい緑の並木道となっている本郷通りや菊坂、言問通りが毎日の通り道となり、 駅やスーパーなどに行く時でさえ散歩のような快適な気分になる豊かな環境です。

計画地の周辺は時代を間違えそうになるくらい歴史と文化の香りがいっぱいの町並みで、散歩コースには事欠きません。

樋口一葉の井戸
樋口一葉の井戸

今流行の樋口一葉の住居跡やゆかりの井戸のほか、石川啄木の下宿跡、坪内逍遥旧居跡、東大赤門…など史跡が数多く、更に足を伸ばせば、根津や谷中、上野の森なども散歩圏です。もちろん、日常生活に欠かせない利便施設も揃っており、買い物が楽しくなる商店街や質の高い教育施設、医療施設なども身近にあります。スローライフと便利な都心の暮らし、両方を一度に満喫できるとても貴重な立地となっています。

東大赤門
東大赤門

Before(築80年のたたずまい)

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▼1階平面図

求道学舎 1階平面図

▼2階平面図

求道学舎 2階平面図

▼3階・屋上平面図

求道学舎 3階・屋上平面図

▼北側立面図

北側立面図

▼東側立面図

東側立面図

After

近代建築の巨匠武田五一設計の往時の空間を再生

プランの特徴と魅力

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  • 建物の躯体は、大正・昭和初期に活躍した建築家武田五一設計の既存建物(求道学舎)の躯体を再生して利用しています。
  • 当時のヨーロッパの建築様式を取り入れてデザインされた拡張高いRのついた窓(南面を除く)や廊下内のアーチ、モダンな階段などはそのまま住戸内に取り込まれています。
  • 階高は3.1~3.6mもある、超ゆとり空間となっています。
  • 防水、壁仕上げ、設備等は躯体再生後、すべて新たに工事し、現代建築の快適性を追加しています。
  • 高さ20mを越す樹齢70年超の既存樹木は保存され、豊かな住環境を形成しています。

耐震性

concrete改修工事前の建物の構造躯体より採取したコンクリートコアについて圧縮試験を施し、コンクリートの強度が十分あることを確認しています。 また、コンクリートの中性化は進んでいましたが、中性化の回復可能な状態にありました。工事にあたっては、躯体の悪い部分を取り除き、 鉄筋を張替え、リフレッシュコンクリートを打設するほか、必要な構造壁の打ち増しなども行い、新築同様の耐震性を確保しました(耐震評定取得)。

リノベーション完成時の様子

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