建築工事費高騰の意味するものは、ゼネコンの総合力の低下か!

 昨年来、特に今年に入ってから、建築工事費の値上がり傾向が著しい。中でも、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)の建物の建築工事費の値上がり率が大きく、分譲マンションなどでは、土地の仕入れ値の値上がり傾向と相まって、供給原価が高騰し、販売価格への転嫁が難しい状況を受けて、ディベロッパー各社は供給量を絞って対応している。

 この建築工事費高騰の原因としては、中国をはじめとする新興国の経済成長に伴う世界的な原材料不足の影響を受けて鉄骨をはじめとする建設資材の値上がりが急であること、原油等の原材料の値上がりから住宅設備機器等の値上がりも始まっていることなどが挙げられているが、実は、今回の建築工事費の高騰は、これまでのものとは相当異質なものと考えられる。

 従来、建築工事費も他の材やサービスの値段と同じく、需要と供給の関係により決まってきた。すなわち、建築工事量がある一定以上増加すると、主として労務量が一定であることから、国内の建築工事費の単価は、労務不足によるいわゆるボトルネックインフレを引き起こしてきた。80年代後半から90年代前半にかけてのバブル期の建築工事費の高騰は、その典型例である。そして、このバブル期には、ゼネコン各社は空前の利益を上げていた。

 しかし、今回の建築工事費の高騰は、こうした過去の例とは全く異なる。第一に、建築工事の着工量は、昨年6月の建築基準法改正を契機に急減しており、労務量が足りないわけでは全くないはずである。確かに、世界的な資源不足を反映して建設資材の値上がりや住宅設備機器等の値上がりはあるが、それだけでは、実感として昨年来3~4割、場合によっては5割以上の建築工事費の値上がりを説明できるものではない。たとえば、鋼材価格が、トン当たり3~4万円から約11万円への3倍にも上昇したといっても、通常のRC造の建物で必要とされる鋼材量は、せいぜい1㎡当たり0.15トン程度、1坪当たり0.5トン程度に過ぎない。鋼材価格がトン当たり7~8万円上がったとしても、建築工事費に及ぼす影響は、3.5~4万円程度に過ぎないのである。第二に、こうした建築工事費の値上がり傾向にもかかわらず、大手ゼネコンをはじめとするゼネコン各社の業績は、むしろ、低下傾向にあることである。

 こうしたことから考えられることは、もはや、ゼネコン自身が、建築工事の原価をコントロールする力を失いつつあるのではないかということである。資材メーカーや設備メーカー、設備系の大手工事会社をはじめ、仕入先や協力会社に対する発注力、コストコントロール力はもとより、決して不足していないはずの労務を確保する力まで、ゼネコン自身の強みとしていた総合力が失われてきているのである。

 昨今、大手建設会社の工事現場で、鉄筋の本数の間違いなど信じられないような単純ミスが発生していることが続々と報道されているが、こうした基礎的な建設技術力の低下を含めて、わが国の建設業界の中心であった総合建設業としてのゼネコンの力が相対的に、しかも急速に低下しつつあることは、わが国の将来にとっても由々しき事態であり、建設業界全体として、その対策に取り組む必要があろう。

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