耐震偽装問題の本質は分譲マンションの原価構造にある!
姉歯元一級建築士が引き起こしたいわゆる耐震偽装問題を契機に、国土交通省は建築基準法の改正を図り、その行き過ぎた法手続きの厳正化が、建築着工数の急減による官製不況を招いたことはご承知のとおりである。この耐震偽装問題については、一級建築士という専門家の倫理の問題を、性悪説に立って法規制の強化という手段で解決しようとしたことや、そもそも行政側の建築確認に係る審査業務の不備が問題であったにもかかわらず、申請者側の義務を強化した点などに対して根強い批判がある。しかし、ここでは、そうした批判とは全く別に、耐震偽装問題の本質として、隠れた大きな問題が存在することを指摘したい。
耐震偽装問題の対象となった建物用途は、分譲マンションが中心であったが、このことは単なる偶然ではないと考えられる。実は、分譲マンションの原価構造にこそ、耐震偽装問題の本質が存在するのである。たとえば、販売価格が1戸当たり5000万円の分譲マンションがあるとする。一般に分譲マンションの原価の中で、販売事業者であるディベロッパーの粗利は販売価格の約20%が相場であり、この例では1000万円が粗利となる。残りの4000万円の内訳として、土地代と建設費(消費税込み)が半々だとすると、それぞれ2000万円となる。一般に分譲マンションの設計料は、建設費の2~3%であるので、仮に2.5%とすると、2000万円×2.5%=50万円と計算され、これはマンションの分譲価格の約1%に当たる。設計料のうち、構造設計に支払われる比率は15%程度であるので、50万円×15%=7.5万円が、5000万円の分譲マンションの構造安全性を担保する構造設計料の値段である。これは、販売価格のわずか0.15%にしか過ぎない。姉歯元一級建築士は、この構造設計料の中で、わずかな労を惜しみ不正に走ったのである。
一方、デベロッパーの粗利の中で、販売費・広告宣伝費は、マンションの売値の6~8%程度(5000万円のマンションでは300万円~400万円)であり、設計料の6~8倍、構造設計料のなんと数十倍にも相当する。マンションの豪華なモデルルームや新聞やチラシ等の宣伝広告、果てはハリウッドの映画スターを起用してのテレビコマーシャルなどに使われる販売費・広告宣伝費に対して、居住者の安全安心を守る原点ともいえる構造設計料がその数十分の一しか割り当てられていないという現実こそ、実は、耐震偽装を生み出す本質的な問題ではないだろうか。仮に、心あるデベロッパーが、販売費・宣伝広告費の15%程度を設計料に余分に割り当てるだけで、現状の設計料は倍になり、その分、時間と労力をかけた良心的な設計が可能になり、他社に比して優れた分譲マンションを供給でき、消費者の支持を受けるのではないだろうか。
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